不動産業でできる業務効率化の種類とツールの選定ポイント

不動産業でできる業務効率化の種類とツールの選定ポイント

不動産業の業務効率化は、物件情報の登録から反響対応、契約、賃貸管理までの流れをたどり、手作業が重なっている業務から順に置き換えるのが近道です。国土交通省の調査では、宅地建物取引業者は2025年3月末時点で132,291業者あり、その大半を小規模な事業者が占めています。少人数で幅広い業務を担う構造そのものが、効率化を必要とする背景になっています。本記事では業界の課題、効率化できる7つの業務、進め方の4ステップ、ツール選定の4つの軸を順に整理します。

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不動産業界の現状の課題

不動産業界の現状の課題

不動産業の効率化を考えるとき、出発点になる課題は人手・業務量・システムの3つです。いずれも個社の事情というより、店舗が地域ごとに分かれ、少人数で幅広い業務を担うという業界の構造から生じています。どこから手を付けるかを決めるために、まず3つの課題を順に確認します。

人手が不足している

不動産業は、少ない人数で営業から管理までを担う体制が一般的です。帝国データバンクの調査では、正社員の不足を感じている企業の割合は2026年7月時点で51.3%にのぼり、4年連続で7月として半数を超えています。採用で解決しようとしても、繁忙期と閑散期の差が大きい不動産業では通年での増員が難しく、既存の人員で処理量を吸収する形になりがちです。

業務量が多く多岐にわたる

担当者ひとりが受け持つ業務の種類が多いことも、負荷が高くなる要因です。物件の調査と撮影、ポータルサイトへの掲載、問い合わせ対応、内見の案内、契約書類の作成、入居後の管理まで、性質の異なる作業が同じ人に集まります。作業の合間に電話が入るため、書類作成のようなまとまった時間を要する業務は夜に回りやすくなります。

IT化が遅れている

不動産業のツール導入率は、他業種と並ぶ水準に達しています。総務省の令和7年通信利用動向調査では、不動産業でクラウドサービスを利用している企業の割合は90.9%と、全産業の平均を上回っています。課題は導入の有無より、部門や担当者ごとに別々のサービスが入り、物件情報と顧客情報がつながっていない点にあります。その結果、同じ情報を複数の画面へ入力する状態が残ります。

自社がどの段階にいるのかを整理してから着手したい場合は、不動産DXとは何かを解説した記事(https://www.bluetec.co.jp/knowledgesuite/service/sfa/article/whatis-realestate-dx/)で、業界全体の取り組みの範囲を確認してください。

不動産業界でできる業務効率化

不動産業界でできる業務効率化

効率化の対象は、物件を預かってから入居後の管理までの流れに沿って7つに整理できます。すべてに一度で着手する必要はなく、自社でどこに時間がかかっているかを当てはめながら、作業量の大きい業務から順に選んでください。

図表1 不動産業で効率化できる7つの業務

物件情報の登録とポータルサイトへの掲載

同じ物件情報を複数のポータルサイトへ手入力している場合、ここが最初の候補になります。掲載先が3サイトあれば入力も3回、修正のたびに3回の更新が必要です。物件管理システムから各ポータルへ一括で配信する仕組みを入れると、入力を1回に減らせます。募集条件の変更漏れによる問い合わせ対応も同時に減ります。

反響への一次対応と追客

問い合わせの取りこぼしを防ぐには、反響を1か所に集約する仕組みが有効です。ポータル経由のメール、自社サイトのフォーム、電話が別々に届くと、対応済みかどうかを担当者の記憶に頼ることになります。顧客管理システムに反響を取り込み、対応状況と次のアクションを記録しておけば、担当者が外出中でも他のメンバーが引き継げます。

内見予約と鍵の受け渡し

内見の日程調整は、予約フォームと空き状況の共有で電話のやりとりを減らせます。案内可能な時間帯を公開しておけば、顧客が自分で枠を選べます。鍵の管理についても、キーボックスや電子錠を使えば、鍵を取りに事務所へ戻る移動そのものをなくせます。移動時間の削減は、1日に案内できる件数に直結します。

契約書類の作成と電子契約

契約書類は、テンプレート化と電子契約の導入で待ち時間を短くできます。顧客情報を登録済みのシステムから差し込めば、書類ごとに氏名や住所を書き写す作業がなくなります。電子契約に切り替えると、押印と郵送の往復にかかっていた日数も圧縮できます。印紙税や保管スペースの負担が軽くなる点も効果として表れます。

重要事項説明のオンライン化

重要事項説明をオンラインで行うIT重説は、来店日程の調整コストを下げます。遠方の顧客が契約のためだけに来店する必要がなくなり、成約までの日数を短縮できます。実施にあたっては、説明の様子を録画するなど所定の要件を満たす運用が必要です。書類の事前送付を電子で済ませておくと、当日の流れがそのままつながります。

賃貸管理(家賃の入金消込と督促)

入金消込は、口座データの自動取り込みで手作業をほぼなくせる業務です。通帳の記帳内容と管理台帳を目視で突き合わせている場合、管理戸数が増えるほど時間と確認漏れが増えます。入金データを自動で照合し、未入金だけを一覧に出す仕組みにすれば、督促の対象がすぐ分かります。督促の連絡履歴も同じ画面に残せます。

社内の情報共有と営業報告

担当者しか経緯を知らない状態を防ぐには、報告と顧客情報を同じ場所に集めることが効果的です。日報をメールや口頭で受けていると、上長が全体の進捗を把握するために集計作業が発生します。商談の履歴を顧客ごとに記録しておけば、報告のための入力が管理データを兼ねます。スマートフォンから入力できれば、移動の合間に済ませられます。

業務効率化をするためのプロセス

業務効率化をするためのプロセス

効率化は、可視化・ペーパーレス・自動化・連携という4つのステップを順に進めると定着しやすくなります。順番を入れ替えると、効果の小さい業務から手を付けてしまい、投資に見合う成果が出ないまま止まることがあります。各ステップで何を行うのかを順に見ていきます。

図表2 業務効率化を進める4つのステップ

業務内容の可視化

最初に行うのは、誰がどの業務に何分かけているかの書き出しです。1週間分でよいので、作業名と所要時間、発生頻度を記録します。所要時間と頻度を掛け合わせると、月あたりの工数が大きい業務が浮かび上がります。この工程を省くと、目立つ業務から着手して効果が出ないまま終わることがあります。

ペーパーレス対応

次に、紙と押印を前提にした手順を電子に置き換えます。申込書、契約書、社内の稟議など、紙が介在する箇所は待ち時間と保管コストの両方を生んでいます。電子化すると検索できるようになるため、過去の契約条件を探す時間も短くなります。自動化を先に進めても、途中に紙が残っていると流れが止まります。

業務自動化

転記や集計といった定型作業は、ツールに任せる対象です。物件情報の一括配信、入金データの自動照合、定型メールの自動送信などが該当します。判断を伴わない作業から始めると、設定の手間が小さく、効果も測りやすくなります。自動化した業務は手順書を残し、担当者が代わっても運用が続く形にしておきます。

外部サービスとの連携

最後に、社内外のシステムをつないで二重入力をなくします。物件ポータル、会計システム、電子契約サービスとデータを連携できれば、同じ情報を複数回入力する必要がなくなります。連携の可否はツール選定の段階で決まるため、将来つなぐ予定のシステムを先に洗い出しておいてください。

業務効率化で得られる3つのメリット

業務効率化で得られる3つのメリット

効率化の成果は、従業員の負担、コスト、業務の標準化という3つの形で表れます。作業時間が減ることで人が定着し、人件費が下がり、担当者が代わっても同じ品質を保てるようになります。いずれも採用と売上の面にも波及する効果です。

従業員負担軽減

作業量が減ることで、退職につながる負荷を下げられます。夜間の書類作成や休日の緊急対応が続く職場では、経験を積んだ担当者ほど転職先の選択肢を持っています。定型作業をツールに任せ、残業時間が短くなれば、離職の理由をひとつ減らせます。人が定着すれば採用と教育にかけていた時間も戻り、人手不足の緩和につながります。

作業量の削減・コスト削減

手作業が減るぶん、人件費として支払っていたコストを抑えられます。例えば入金消込に毎月10時間かけている場合、自動照合に切り替えれば、その時間を募集活動や既存顧客の対応に振り向けられます。紙の印刷費、郵送費、保管スペースの費用も同時に下がります。残業時間の削減は、そのまま人件費の削減として決算に表れます。

属人化を防止、業務の標準化

手順がシステム上に固定されるため、担当者が代わっても同じ品質と時間で処理できます。顧客ごとの経緯や物件の条件が個人のメモに留まっていると、引き継ぎのたびに確認の連絡が発生します。入力項目と手順を決めておけば、経験の浅いメンバーでも同じ流れで対応でき、教育にかかる期間も短くなります。

不動産業務効率化のツールを選ぶ際のポイント

ツール選定では、次の4つの軸を上から順に確認してください。店舗が分散し、繁忙期に人が増え、担当者が外出しているという不動産業の働き方から導かれる項目で、機能一覧を並べて比べるだけでは判断がつきません。

図表3 不動産業のツール選定 4つの軸

課金単位が人数か法人単位かを確認する

最初に見るのは、全員に配ったときの月額総額です。単価の安さは、配布人数を掛けた時点で意味が変わります。不動産業は繁忙期の増員やパート・アルバイトの活用が多く、人数課金では時期によって費用が変動します。法人単位の定額制であれば、人数が増えても月額は変わりません。自社の在籍人数と繁忙期の増員見込みを当てはめて比べてください。

外出先とスマートフォンで完結するか

入力が外出先で完結するかどうかで、報告が夜に残るかが決まります。案内や現地調査の合間に商談内容を登録できれば、事務所へ戻ってからの作業がなくなります。パソコン版と同じ項目をスマートフォンから扱えるか、写真をその場で添付できるかを実機で確かめてください。通信環境の弱い現場での動作もあわせて確認する対象です。

既存の業務システムやポータルと連携できるか

連携の可否は、二重入力がどれだけ残るかを左右します。物件ポータル、会計システム、電子契約サービスとデータを受け渡せるかを確認してください。APIが公開されているか、連携が標準機能かオプションかで費用も変わります。将来つなぐ予定のシステムを含めて、対応範囲を見ておくと後戻りを避けられます。

導入と定着の支援を受けられるか

設定と教育を自社だけで抱えると、契約したまま使われない状態になりやすくなります。初期設定の代行、操作説明会、運用開始後の問い合わせ窓口が用意されているかを確認してください。支援が月額に含まれるか、別料金かで総額が変わります。情報システム担当を置いていない事業者ほど、この軸の重みが大きくなります。

営業情報を扱うツールの機能そのものを整理しておきたい場合は、SFAとは何かを解説した記事で、顧客管理システムとの違いを確認できます。

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自社の業務にどこまで当てはまるかは、機能と料金の一覧で確かめるのが早道です。

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まとめ

まとめ

不動産業の業務効率化は、物件情報の登録から賃貸管理までの流れに沿って、手作業が重なる業務から着手します。

進め方は、業務内容の可視化、ペーパーレス対応、業務自動化、外部サービスとの連携という順序です。ツールを選ぶ際は、課金単位が人数か法人単位か、外出先とスマートフォンで完結するか、既存システムやポータルと連携できるか、導入と定着の支援を受けられるかという4つの軸で判断してください。この順に確認すると、月額の単価だけでは見えない総額と運用負荷の差が明らかになります。

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【執筆者】

執筆者:松岡 禄大朗

松岡 禄大朗

ブルーテック株式会社・デマンドジェネレーション部所属。
前職のWEB広告代理店で広告運用やアクセス解析を担当。
WEBマーケティング知識を活かして、現在はコンテンツマーケティングに携わり数多くの記事を執筆。

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