DXの成功事例集26選!業界別の取り組み・施策例を一挙紹介
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、製造・物流・小売・建設・金融など、さまざまな業界で加速している重要な経営テーマです。
本記事では、国内先進企業を中心に、業界別のDX成功事例を26例紹介します。各社が抱えていた課題や導入したデジタル技術、そこから得られた成果を整理しながら、実践に活かせる形でわかりやすく解説します。DX推進を検討している担当者や経営層の方は、自社の施策や進め方を考える際の参考としてぜひご覧ください。
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【この記事の目次】
そもそもDXとは?

DXとは、企業がデータやデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革する取り組みです。業務プロセスや組織体制、企業文化まで見直し、競争優位の確立につなげていきます。単なるIT化や業務効率化にとどまらず、経営戦略と一体で進めるのがDXの大きな特徴です。
【製造業】DX推進の成功事例

製造業は、生産現場のデータ活用・IoT導入・AI活用など、DXの恩恵が最も大きい業界のひとつです。ここでは、国内製造業における代表的なDX成功事例を10例紹介します。
事例①:トヨタ自動車|IoT・生成AIで「匠の技」をデジタル化
トヨタ自動車は、製造現場のDXとして複数の先進的な取り組みを推進しています。工場設備にIoTセンサーを導入し、稼働状況・停止時間・電力消費量をリアルタイムでクラウドに集約。これにより、設備保全作業に要する時間を「16分から7分へと約60%削減」することに成功しました。
さらに、熟練工の「暗黙知」をデジタル技術で可視化・データ化し、次世代への技術継承を実現。生成AIを活用した全社横断的なデータ検索プラットフォームも導入し、現場社員が自らアプリを開発する「市民開発」の文化も根付かせています。欧州においては、ローカル5GをNTT東日本と連携して工場内に展開し、結果として「リードタイム50%削減・生産性20%向上」という成果を上げています。
デジタルバッジ制度でスキル習熟度を可視化することで、人材育成と現場改善を同時に推進する体制が整備されました。
事例②:日立製作所|IoTプラットフォーム「Lumada」で事業変革
特徴は、単なる技術導入ではなく、経営や組織、顧客提供価値まで含めて変革するデータドリブン経営へ転換している点です。背景には、2009年3月期に計上した7,873億円の巨額赤字がありました。これを機に、部門ごとに分断されたシステムや情報のサイロ化が課題となり、全社横断でデータを活用できる基盤整備が進められました。
そこで日立は、OTとITを融合した「Lumada」を構築。既存システムを置き換えるのではなく、分散していたデータやシステムをつなぎ、一元的に活用できる仕組みを整えました。その結果、製造現場では設備異常の予兆検知や保守コスト削減、停止リスクの低減を実現し、社会インフラ分野でも維持管理の効率化や安全性向上に貢献しています。
さらに「Lumada」は社内活用にとどまらず、顧客やパートナーとの協創基盤としても展開され、鉄道・エネルギー・都市インフラ、流通など多分野で活用されています。現場データと経営データをつなぎ、社内外を巻き込んで価値創出を進めている点で、日立製作所は国内有数のDX先進企業といえるでしょう。
事例③:旭鉄工株式会社|自社開発IoT「iXacs」で生産性43%向上
トヨタ系一次サプライヤーである旭鉄工株式会社は、市販のIoTソリューションに頼らず、自社開発のIoTシステム「iXacs(アイザックス)」を構築し、現場起点のDXを進めてきました。iXacsは、生産設備の稼働状況・停止時間・電力使用量などをリアルタイムで可視化し、異常や停止情報を即時共有することで、現場の改善活動を加速させる仕組みです。同社の特徴は、データの見える化にとどまらず、改善活動に直結させている点にあります。
実際に、100ラインで平均43%の生産性向上や年間8万時間の工数削減、年間10億円の収益増、電力消費量42%削減といった成果を上げています。さらに、蓄積した改善ノウハウを生成AIに学習させた「カイゼンGAI」も開発しました。現場担当者が改善提案を得られる体制を整え、ベテランの知見を誰でも活用しやすい形に変えています。
また、このノウハウはスピンオフ企業「i Smart Technologies」を通じて国内外200社以上に展開されており、旭鉄工は中小企業におけるDXのロールモデルとして注目されています。
事例④:AGC株式会社|AI異常検知で年間3万時間の検査作業を削減
ガラス・化学品大手のAGCは、AI画像認識を活用した自動検査システムを導入し、製造現場の品質管理高度化を進めています。従来は熟練工の目視に頼っていた検査工程に、測定システム・機械学習・画像処理アルゴリズムを組み合わせた独自モデルを導入することで、高精度な不良検出と検査工程の自動化を実現しました。これにより、年間約3万時間の検査作業削減が見込まれています。
AGCの特徴は、単一工程の省力化にとどまらず、製造から物流、品質保証までをデジタルでつなげている点です。2025年には、センサー付きISOコンテナを活用した新たな物流サービスも発表しました。コンテナ内容量をリアルタイムで把握し、適切な納入時期を提案することで在庫管理や発注業務の負担を減らせるうえ、ISOコンテナをそのまま貯槽として使えるため荷卸し時間の短縮にもつながります。
このようにAGCは、AIによる検査自動化と、センサー活用による物流の見える化を組み合わせることで、現場改善のスピードと精度を高めています。製造・物流・品質管理を横断して全体最適を進めている点で、AGCは素材産業におけるDX先進企業の1社といえるでしょう。
事例⑤:富士フイルムホールディングス|ERP・AIでサプライチェーン全体を変革
富士フイルムホールディングスは、ERPやAIを活用し、グループ全体のサプライチェーン改革を進めています。特徴は、生産・調達・在庫・販売にまたがるデータを横断的につなぎ、業務効率化だけでなく、経営判断のスピードと精度向上にもつなげている点です。なかでも注目されるのが、サプライヤー連携DXによる在庫最適化です。
富士フイルムグループは、自社開発のデジタルトラストプラットフォームとブロックチェーン技術を活用し、生産計画や納期情報を関係者間で迅速かつ安全に共有できる仕組みを構築しました。これにより、従来のメール・電話・FAX中心のやり取りを見直し、情報伝達にかかる工数を約10分の1に削減しています。
結果として、安定調達や余剰在庫の削減、在庫日数の短縮が進み、コスト削減とキャッシュコンバージョンサイクルの改善にもつながりました。このように富士フイルムホールディングスは、ERP・AI・ブロックチェーンを組み合わせながら、個別最適ではなくサプライチェーン全体の最適化を推進しています。デジタルと経営戦略を連動させたDX推進体制が、持続的な競争力の土台となっています。
事例⑥:ブリヂストン|AIによる製造条件の自律制御を実現
タイヤ・ゴム大手のブリヂストンは、次世代タイヤ技術「ENLITEN」とモノづくりDXを組み合わせ、製造現場の高度化を進めています。特徴は、商品設計と製造改革を切り離さず、一体で進めている点です。製造領域では、デジタルセンシングやAI、自動制御を活用し、工程全体をつなぐ次世代の製造基盤づくりを推進しています。なかでも注目されるのが、AIを活用した製造条件の自律制御です。
熟練技術者の経験に依存しやすかった製造パラメータの調整をAIで最適化することで、品質の均一化と高効率生産の両立を図っています。2024年から2026年の中期経営計画では、この仕組みをグローバル20工場へ展開する方針も打ち出しました。
また、同社は製造改革の基盤として、共通化とモジュール化を進めるBCMAも推進中です。ENLITENを商品設計の基盤技術、BCMAを製造と研究開発の基盤技術と位置づけ、性能向上とコスト低減の両方を狙っています。さらに、中長期ではデジタルツインの実現も視野に入れており、開発・調達・市場での使用データまでつなぐ体制づくりを進めているところです。
このようにブリヂストンは、AIによる製造条件の自律制御を軸に、商品設計から製造まで一体となったDXを推進しています。製造現場の属人性を抑えつつ、品質・効率・開発力を同時に高めている点は、製造業DXの先進事例として参考になるでしょう。
事例⑦:キユーピー|AI画像解析で不良品検知を自動化
食品製造大手のキユーピーは、AI画像解析を活用した原料検査装置を導入し、検品工程の高度化を進めています。従来の食品工場では、人手による目視検査が中心で、検査員の熟練度や負担の差が課題でした。そこでキユーピーは、不良品の特徴ではなく「良品の特徴」をAIに学習させ、そこから外れるものを異常として検知する「良品学習型」の仕組みを採用。ベビーフード原料などの検査に活用し、高精度な選別を可能にしました。
この取り組みの特徴は、AIの精度だけでなく、現場で使いやすい設計まで含めて実装している点です。装置はボタンひとつで操作できるシンプルな仕様とし、分解、洗浄しやすい構造や、省スペースで設置できる点にも配慮されています。
こうした工夫によって、従来は熟練者に依存していた検査業務の標準化と省力化が進み、現場負担の軽減や人員の再配置にもつながっています。実際にキユーピーは、2018年に鳥栖工場でダイスポテトを対象とした試用を開始し、その後グループ内の惣菜工場にもAI活用型の原料検査装置を導入しました。統合報告書でも、この取り組みを「世界初の良品学習型原料検査装置」と位置づけ、品質保証や生産性向上に寄与する施策として紹介しています。
このようにキユーピーは、伝統的な食品製造の現場にAIを実装することで、検査精度の向上と省人化を両立させています。現場で使える形に落とし込みながら横展開を進めている点で、食品業界におけるDXの先進事例といえるでしょう。
事例⑧:ダイキン工業|クラウド型空調制御「DK-CONNECT」をグローバル展開
空調機器大手のダイキン工業は、クラウド型空調コントロールサービス「DK-CONNECT」を軸に、製品販売中心の事業から継続的なサービス提供へと転換を進めています。DK-CONNECTは2021年度から国内で展開されているクラウド型サービスで、業務用空調機の運用・保守・更新を一体で支援します。施設内の空調機器をクラウドにつなぎ、運転状況やエネルギー使用状況をリアルタイムで収集、分析できる点が特徴です。
これにより、顧客ごとの利用環境に応じた遠隔監視や一元管理に加え、エネルギーの見える化・省エネシミュレーション・機器間の連携制御・デマンド制御まで可能になりました。2025年には、空調機の制御を遠隔かつ自動で最適化する新たな省エネ機能も追加され、快適性と省エネ性の両立をさらに進めています。
また、ダイキンは30年以上にわたり、24時間365日の遠隔監視サービスを通じて故障データを蓄積してきました。DK-CONNECTは、こうした保守データ基盤を活かしながら、異常の早期把握や予防保全、管理工数の削減にもつなげています。空調機器というモノを販売するだけでなく、導入後の運用最適化まで継続的に支援するビジネスモデルへ発展させている点は、同社の大きな特徴です。
このように、ダイキン工業は空調機器の運用データを活用しながら顧客への提供価値を広げ、機器メーカーから空間環境を支えるサービス企業へと進化しています。
事例⑨:JFEホールディングス|CPS導入でスマート製鉄所を実現
JFEホールディングスは、CPS(サイバー・フィジカル・システム)を軸に、製鉄所全体のデジタル化を進めています。設備や製造プロセスのリアルタイムデータをデジタル空間上で活用し、AI分析によって生産最適化や設備異常の予兆検知、品質向上につなげている点が特徴です。JFEスチールでは、主要工程へのCPS導入率が約80%に達しています。
CPSを支える基盤としては、ITデータとOTデータを統合する環境を整備し、製造条件の最適化や異常検知の高度化を推進。高炉操業などでも、安定稼働や生産ロスの抑制に役立てています。
また、技術導入だけでなく、人材育成にも注力している点も特徴です。市民開発者630名、データサイエンティスト660名の体制を整え、RPAやローコード開発を幅広い業務へ展開しています。さらに、生成AI「Chat JFE」も導入し、文書作成や情報検索の効率化も進行中です。
このようにJFEホールディングスは、CPSによる現場改革・人材育成・生成AI活用を一体で進めることで、重厚長大型産業におけるDXを体系的に実装しています。現場で活用しきるための体制まで築いている点は、同社の強みともいえるでしょう。
事例⑩:旭化成株式会社|DX-Challenge「10-10-100」を全達
旭化成は、「DX-Challenge 10-10-100」という独自の数値目標を掲げ、全社的なDXを推進してきました。具体的には、「デジタルプロ人財を2021年度比で10倍」「データ活用量を10倍」「重点テーマによる累計100億円の増益貢献」を2024年度までの目標に設定し、DXを経営戦略の中核に位置づけています。
特徴は、DXを単なる業務効率化ではなく、事業構造の転換や成長領域の拡大につなげている点です。化学・住宅・ヘルスケアなど多様な事業を持つ同社では、グループ横断でデータと人材を活用する基盤整備を進め、全従業員がデジタルを前提に働く「デジタルノーマル期」への移行を見据えています。
また、旭化成は無形資産を活かした新規事業創出にも力を入れています。その代表がTBC(テクノロジーバリュー事業開発)で、特許・ノウハウ・データ・アルゴリズムなどの無形資産を共創パートナーのリソースと組み合わせ、新たな事業や収益機会の創出を目指す取り組みです。研究開発の過程で生まれた知見を早い段階から価値化し、ライセンスやソリューション型事業へつなげようとしている点も特徴です。
このように旭化成は、明確な数値目標のもとで人材・データ・収益の3軸を同時に伸ばしながら、DXを経営と事業開発の両面で進めてきました。目標管理と新規価値創出を結びつけている点は、同社のDX推進力をよく示しているといえるでしょう。
【物流業】DX推進の成功事例

物流業界では、人手不足や配送負担の増加を背景に、従来のやり方だけでは対応が難しくなっています。そこで進んでいるのがDXです。デジタル技術を活用して、作業効率の改善や省人化、サービス品質の向上を図る動きが広がっています。ここからは、物流業界で実際に成果を上げているDX事例を見ていきましょう。
事例①:ヤマト運輸|AI配送量予測とECエコシステムの確立
ヤマト運輸は、ビッグデータとAIを活用し、配送業務の効率化とEC領域での価値提供を同時に進めています。象徴的なのが、AIによる配送業務量予測システムと適正配車システムの導入です。販売・物流・商品・需要トレンドなどのデータをもとに配送量を予測し、配車計画を最適化することで、配送生産性は最大20%向上、走行距離とCO2排出量は最大25%削減できるとされています。
また、EC領域ではラストワンマイル配送サービス「EAZY(イージー)」を展開し、受取方法の多様化を進めています。置き配や配達直前の受取方法変更に対応することで、利用者の利便性を高めるだけでなく、EC事業者側の不達や返品、再配達の負担軽減にもつなげました。実際に導入企業では、置き配利用率が20%を超え、不達率が約50%減少した事例も報告されています。
ヤマトグループ全体でも、デジタル戦略を単なる業務効率化の手段ではなく、顧客体験の向上と第一線で働く社員の働きやすさを支える基盤と位置づけています。物流ネットワークの強靭化・ラストマイル拠点の見直し・現場業務の標準化・電子化も進めており、DXを事業基盤の再設計へつなげている点が特徴です。
このようにヤマト運輸は、AIによる配送最適化と、EAZYを軸としたEC向けサービス強化を両輪で進めています。物流の効率化にとどまらず、EC事業者や受取人を巻き込んだ新たな配送価値をつくっている点に、同社のDXの強みが表れているといえるでしょう。
事例②:佐川急便(SGホールディングス)|ロボット・AIで物流オペレーションを革新
SGホールディングスは、ロボットやAIを活用し、物流オペレーションの高度化を多角的に進めています。なかでも象徴的なのが、佐川グローバルロジスティクスの東松山SRCに導入した次世代型ロボットソーター「t-Sort」とRFIDシステムです。繁閑差に応じて柔軟に運用できる仕組みを整えたことで、ヒューマンエラーによる誤発送の撲滅に加え、作業人員を27%削減し、出荷作業の生産性も向上しました。
配送領域では、ルート最適化システム「Loogia」の導入も進めています。配送先や時間指定などの条件をもとに最適なルートを算出することで、走行距離や配送時間の短縮を図り、特に経験の浅いドライバーでも業務を進めやすい体制づくりに役立ててきました。こうした取り組みは、配送品質の安定化とドライバー負担の軽減にもつながっています。
さらに同社は、将来的な人手不足を見据え、自動運転やドローン配送の実証にも取り組んでいます。2024年にはレベル4自動運転トラックによる幹線輸送の公道実証に参画し、2025年にはドローン物流の実装に向けた公開実証も進めました。足元の業務改善だけでなく、次世代物流インフラの整備まで視野に入れている点も特徴です。
加えて、SGホールディングスはDXを経営基盤の強化とも結びつけています。グループの経営資料では、DXを競争優位創出の重要テーマと位置づけ、AI搭載の荷積みロボット実証やDX人材育成を推進中です。技術導入を投資判断や経営管理と結びつけているところにも、同社の姿勢が表れています。
事例③:三菱倉庫|Smart Hybrid Warehouseで倉庫業のデジタル化を推進
三菱倉庫は「Smart Hybrid Warehouse」の全拠点展開を進め、倉庫業務のDXを加速させています。これは、現場で培われた知恵や経験に、IoT・ロボティクス・データ分析・AIといった先端技術を掛け合わせ、人とロボットが協働する倉庫オペレーションを実現する取り組みです。人手不足が深刻化するなかでも、オペレーションの標準化とサービス品質向上を支える土台になっています。
全社横断のデータ活用基盤の整備にも力を入れており、各拠点の稼働状況や生産性を把握しやすくすることで、倉庫運営の効率化はもちろん、拠点配置や物流ネットワーク全体の最適化にも活用しています。中期経営計画でも、倉庫内業務の集約と効率化、自動倉庫やロボット導入の拡大が打ち出されました。
さらに現場では、Android端末や電子ホワイトボードの導入、重筋作業の負担軽減に向けたソリューション活用も進行中です。単に機械化を進めるのではなく、現場で使いやすい形に落とし込みながら、ペーパーレス化や日々の業務改善を積み上げているところに特徴があります。
このように三菱倉庫は、労働集約型になりやすい倉庫業へデジタル技術を組み込み、現場改革と物流ネットワークの最適化を同時に推進しています。
【小売・流通業】DX推進の成功事例

小売・流通業界では、顧客データの活用・EC強化・在庫最適化など、デジタル技術による競争力強化が急務となっています。
ここでは国内先進企業の4事例を紹介します。
事例①:ニトリホールディングス|データ活用の内製化で1,000名規模の分析人材を育成
ニトリホールディングスは、データ活用の内製化を戦略的に進め、自社内でデータの収集・分析・意思決定までを担える体制づくりを強化しています。
その中核として、2022年にはグループのDXを担う「ニトリデジタルベース」を設立し、2032年までに社内IT人材を1,000名以上へ拡大する計画を掲げました。外部ベンダーへの依存を抑えつつ、事業とITの両方を理解する人材を育成し、変化に強い組織づくりを進めている点が特徴です。
また、ニトリは「製造物流IT小売業」という独自のビジネスモデルを掲げ、商品開発・物流・店舗運営・ECまでを一体で最適化してきました。購買データや顧客行動データを横断的に活用できる分析基盤を整えたことで部門を越えたデータ活用が進み、需要予測の精度向上・在庫最適化・欠品率の低減・業務効率化にもつながっています。
さらに、生成AIなどのデジタル技術も取り入れながら、社員一人ひとりがより付加価値の高い業務に集中しやすい環境を整備しています。ニトリホールディングスは、ITとデータを経営の土台に据え、内製化による自走型のDX組織を育成してきました。需要予測や在庫最適化、業務効率化を横断的に進め、外部環境の変化に迅速に対応できる経営基盤の強化につなげている点が、同社の強みです。
事例②:資生堂ジャパン|EC×オウンドメディア戦略でパーソナライズ接客を実現
資生堂ジャパンは、EC強化とオウンドメディア戦略を組み合わせ、デジタルマーケティングのDXを進めています。公式ECサイト「資生堂オンラインストア」と会員サービス「Beauty Key」を軸に、オンラインとオフラインをまたいだ顧客接点の再構築を進めている点が特徴です。
具体的には、肌状態を確認できる「肌パシャ」や、美容診断コンテンツなどを通じて、一人ひとりに合わせた商品提案や情報配信を実現。店頭接客に近い体験をオンラインでも提供できる体制を整えています。
また、会員基盤を活用して自社で把握できる顧客接点を強化し、OMOの推進にも注力。ECの利便性と店舗接客の強みを組み合わせながら、継続的な顧客関係の構築を図っています。このように資生堂ジャパンは、EC・会員基盤・美容体験コンテンツを連動させることで、化粧品業界におけるパーソナライズ接客の高度化を進めているといえるでしょう。
事例③:ミスミグループ本社|AIプラットフォーム「meviy」で部品調達を革新
ミスミグループ本社は、製造業向けAIプラットフォーム「meviy(メビー)」を通じて、機械部品の調達プロセスを大きく変革してきました。従来は、図面作成や見積依頼、価格確認に数日から数週間かかることもありましたが、「meviy」では3DCADデータをアップロードするだけで、AIが形状を解析し、見積もりから発注までを自動で進められます。
この仕組みにより部品調達にかかる時間は92%削減され、累計で1,043万時間を創出しました。さらに、2022年のオンライン機械部品調達サービス国内市場では、利用ユーザー数シェア57.0%で3年連続首位を獲得し、国内ユーザー数も10万人を突破しています。
さらに、ミスミは「meviy」に加え、基幹システム「NEWTON」の内製開発も進めてきました。「NEWTON」は、グローバル展開を支える中核基盤として整備されたもので、マイクロサービス型の受発注機能やフルフィルメント基盤・API連携などを備えています。その結果、旧システムと比べて開発スピードは3倍に高まり、コストは3分の1に圧縮されました。既存事業の強化はもちろん、新サービスを立ち上げやすい環境づくりにもつながっています。
このようにミスミグループ本社は、「meviy」で部品調達の時間ロスを減らしつつ、「NEWTON」によってバリューチェーン全体のスピードと柔軟性も高めてきました。個別業務の効率化にとどまらず、製造業の調達そのものを再設計している点に、同社のDXの強みが表れています。
事例④:アスクル|生成AI・ビッグデータで物流と購買体験を変革
アスクルは、BtoB通販とEC事業のDXを支える基盤として、ビッグデータ基盤「ASKUL EARTH」と生成AIの全社活用を進めています。物流・商品・顧客行動など、バリューチェーン全体で生まれるデータを一元化し、業務効率化と顧客体験向上の両立を目指している点が特徴です。
全社のビジネスデータを共通基盤に集約し、各部門が横断的に分析しやすい体制を整えています。物流面では、東京大学との共同研究を通じて配送最適化モデルを開発し、注文データをもとに物流効率の向上と環境負荷の低減を進めてきました。加えて、在庫配置の最適化や物流シミュレーションの高度化にも取り組み、EC物流全体の最適化を推進しています。
生成AIについても、自社専用ツールを全社員向けに導入し、商品説明文の作成や問い合わせ対応、社内業務の効率化などに活用しています。実験段階で終わらせず、全社の業務基盤へ落とし込んでいる点も見逃せません。また、マーチャンダイジング領域でも、需要予測や在庫最適化を進め、物流データと購買データの活用によってリピート率向上や廃棄ロス削減につなげています。
このようにアスクルは、ビッグデータ基盤と生成AIを掛け合わせながら、物流と購買体験の両面でDXを推進してきました。個別業務の効率化にとどまらず、バリューチェーン全体の再設計に踏み込んでいる点に、同社の強みがあります。
【建設・不動産業】DX推進の成功事例

建設・不動産業界では、安全管理や施工品質に加え、顧客対応の改善も課題です。その解決策として、DXの活用が広がっています。
ここからは、建設・不動産業界のDX成功事例を見てみましょう。
事例①:大成建設|デジタルツイン・AIで建設現場を変革
大成建設は、生産プロセス、経営基盤、サービスの3領域でDXを体系的に進めています。建設現場では、BIMやCIM、IoTを活用したデジタルツインにより、施工状況や品質管理データをリアルタイムで可視化。AIやリモート技術も組み合わせることで、工程管理や品質確認、安全管理の高度化を図っています。
こうした取り組みを支えるのが、全社的に展開しているDX標準基盤です。現場ごとの個別対応にとどまらず、標準化された基盤として横展開することで、建設現場全体の生産性向上を進めています。
また、経営基盤の領域では、社内外のデータを集約し、分析や予測に活用する体制づくりも推進。顧客向けサービスでも、施工の効率化だけでなく、建物や構造物のライフサイクル全体を支える価値提供へと広げています。このように大成建設は、現場の可視化と高度化を起点に、経営基盤や顧客向けサービスまで含めたDXを一体で進めている点が特徴です。
事例②:三菱地所|共通認証基盤「Machi Pass」でスマートシティを推進
三菱地所は、共通認証基盤「Machi Pass」を軸に、丸の内エリアを中心としたスマートシティ化を推進しています。複数のサービスを一つのIDで利用できる環境を整備し、利用履歴や位置情報などのデータをもとに、利用者ごとに最適化された情報やサービスを提供できる仕組みを築いてきました。
さらに、顔認証基盤「Machi Pass FACE」も開発し、入退場や施設利用の利便性向上を図っています。加えて、分析基盤を活用した事業横断のデータ活用も進めており、認証機能の導入にとどまらず、自治体を含む街全体の体験価値向上へとつなげている点が特徴です。
住宅領域では、スマートホームサービス「HOMETACT」も展開していて、住宅設備や家電をひとつのアプリでまとめて操作できる環境を整えています。こうした取り組みにより、三菱地所は街と住まいの両面から、不動産のバリューチェーン全体にDXを浸透させているのです。
事例③:大東建託|ディープラーニングで物件画像を自動分類
大東建託は、TensorFlowを活用したディープラーニングにより、物件画像の自動分類システムを導入しました。従来、賃貸物件の写真は担当者が一枚ずつ確認し、リビング、キッチン、玄関などのカテゴリに手作業で振り分けたうえで登録しており、1物件あたり5分から10分ほどを要していました。年間登録件数は約30万件にのぼり、現場の大きな負担となっていたのです。
そこで同社は、Google Cloud上に画像分類モデルを構築し、複数の写真をまとめて投入するだけで、21カテゴリへ自動分類できる仕組みを整えました。これにより、画像登録作業は70%削減され、月間では約3,000時間の工数削減が見込まれています。単純作業の自動化が進んだことで、担当者を顧客対応など、より付加価値の高い業務へ振り向けやすくなった点も見逃せません。
この取り組みは、不動産業界に残るアナログ業務へAIを実装し、現場の生産性向上を着実に進めた実践例です。大規模な業務改革に頼るのではなく、負荷の高い工程を的確に自動化して成果につなげたところに、大東建託のDXの強みが表れています。
事例④:野村不動産ソリューションズ|Webパーソナライズで個別最適な物件提案を実現
野村不動産ソリューションズは、不動産情報サイト「ノムコム」において、顧客データを活用したパーソナライズ施策を進め、オンライン接客の高度化を図ってきました。前身の野村不動産アーバンネット時代には、マーケティングオートメーションツール「Probance」を導入。サイトの閲覧履歴や顧客属性をもとに、一人ひとりに合わせた情報提供を強化しています。
この取り組みの特徴は、おすすめ物件の表示だけにとどまらない点です。セミナー情報や不動産市場の動向、値下げ通知まで含め、顧客ごとに最適化したコミュニケーションを実現しています。
実際、Probance導入前に活用していたDMP「Rtoaster」によるパーソナライズ配信では、一斉配信メールと比べて資料請求などの反響率が約1.5倍に向上しました。こうした成果を踏まえ、より細やかなレコメンドやシナリオ配信へと発展させています。
さらに直近では、「ノムコム」を一人ひとりに最適化された体験へ進化させる構想のもと、生成AIを活用したパーソナライズ施策も始動。Web上での閲覧画像数や滞在時間などをAIが解析し、利用者ごとに適した情報提供の強化を進めています。
このように野村不動産ソリューションズは、顧客データを活かした継続的な情報提供を通じて、不動産業界におけるオンライン接客の質を高めてきました。検討期間が長くなりやすい高関与商材だからこそ、個別最適な提案を積み重ねながら関係を維持していく発想に、同社のDXの強みが表れているといえるでしょう。
【保険・金融業】DX推進の成功事例

保険・金融業界では、手続きのデジタル化やデータ活用を軸に、業務効率化と顧客体験の向上が進んでいます。規制対応や安全性の確保が求められるなかでも、DXによって新たな価値を生み出す企業は着実に増えています。
ここからは、保険・金融業界のDX成功事例を見ていきましょう。
事例①:三井住友フィナンシャルグループ|生成AI「SMBC-GAI」と「Olive」で金融サービスを再定義
三井住友フィナンシャルグループは、生成AIの活用と顧客向けデジタル金融基盤の整備を両輪で進め、グループ全体のDXを加速させています。特にAI分野では、2024年10月に次期中期経営計画を含む500億円の投資枠を設定し、与信審査や業務効率化、新規ビジネス創出を見据えた取り組みを本格化させました。
社内向けには、独自生成AI「SMBC-GAI」を展開。開発初期に短期間で立ち上げた後も機能拡張を続け、2026年には130万件の社内文書ファイルを横断検索できる仕組みへと進化しました。これにより、本店各部への照会を自己完結しやすくなり、営業店を含む日常業務の効率化やナレッジ活用の高度化につながっています。
顧客向けサービスでは、総合金融サービス「Olive」が中核を担っています。銀行口座・カード決済・ファイナンス・オンライン証券・オンライン保険などをアプリ上でシームレスに利用できる設計が特長で、2023年3月の開始から2年で500万アカウントを突破しました。複数の金融機能を横断的に使える利便性によって、SMBCグループの新たな顧客接点を広げる基盤となっています。
生成AIを基幹業務に組み込みながら、大規模な顧客サービス改革も同時に進めている点は、国内金融業界でも先進的です。業務変革と顧客体験の刷新を並行して進める姿勢に、同社のDXの強みが表れているでしょう。
事例②:りそなホールディングス|データサイエンス内製化で「自走型」DXを確立
りそなホールディングスは、グループ内にデータサイエンス体制を整備し、データ活用の内製化を進めることで、自走型のDXを推進してきました。分析人材の育成と活用領域の拡大を継続しており、DX銘柄にも3度選定されています。
特徴は、外部ベンダーに過度に依存せず、グループ内でデータ分析の企画から実装、改善までを回せる体制を築いている点にあります。顧客軸でのレコメンドモデル構築に加え、システム開発の内製化や全社員のIT、DXスキル向上にも取り組んできました。
また、こうした知見はグループ内にとどまらず、AI業務支援ツール「Data Ignition」を通じて地域金融機関への展開も始まっています。このように、りそなホールディングスは分析人材の育成・データ活用の内製化・外部展開を一体で進めることで、金融業界における自走型DXの実践モデルを築いてきた企業です。
事例③:横浜銀行|AIレコメンドエンジンでインターネットバンキングを刷新
横浜銀行は、2019年4月にインターネットバンキングのログイン専用ページを「マイページ」へ刷新し、「Rtoaster」を活用したOne to One対応を強化しました。実店舗のように、一人ひとりのニーズに寄り添った提案をデジタル上でも実現することが狙いです。
具体的には、閲覧履歴・流入経路・お気に入り登録の情報をもとに、表示するメッセージやバナー、案内コンテンツを出し分ける仕組みを整備しました。画一的な情報表示から脱却し、顧客ごとに関心の高い商品や情報へ自然につなげる導線を構築している点が特徴です。
その結果、ログインページのPV数は13.7%向上し、約5万件にのぼる顧客の興味、関心データの把握にも成功しました。蓄積したデータは、その後のサービス改善や提案精度の向上にも活用され、デジタルチャネルを通じた顧客接点の質と量の両面を高めています。
地方銀行でも、デジタルチャネルにおける顧客体験の向上が競争力を左右する時代になっています。そうしたなかで横浜銀行の取り組みは、地域金融機関におけるDXの先行事例といえるでしょう。データ活用とUI、UX改善を連動させた戦略的なアプローチに、同社の特徴がよく表れています。
事例④:ふくおかフィナンシャルグループ|内製開発で126万人規模のアプリを構築
ふくおかフィナンシャルグループは、個人向けバンキングアプリや事業者向けポータル「BIZSHIP」を軸に、地域密着型のデジタルサービスを拡充しています。特徴は、企画・設計・開発・運用をグループ内で連動させる内製開発体制を強化している点です。
個人向けアプリは日常的な銀行取引を使いやすく見直し、BIZSHIPは事業者向けの主要なデジタル接点として機能しています。こうしたチャネル整備によって、顧客接点の拡大と営業の高度化を同時に進めてきました。業務効率化の面でも、生成AIを活用した稟議意見書作成支援システムを導入し、融資業務の効率化を推進。担当者の負担軽減と業務時間の削減につなげています。
このように、ふくおかフィナンシャルグループは顧客向けサービスの内製化と業務改革を並行して進めることで、地域金融機関ならではのDXを前進させているといえるでしょう。
事例⑤:株式会社クレディセゾン|内製開発と「最短0秒審査」でカード業務を革新
クレディセゾンは、内製開発体制の強化とAI活用を両輪で進め、クレジットカード業務のDXを加速させています。なかでも象徴的なのが、基幹システムをつなぐ社内API基盤「オープンGW」の内製化です。重要システムの自前化を進めたことで、外部ベンダーへの依存を抑えながら、運用効率と改善スピードの向上につなげてきました。
大きな成果のひとつが、2024年7月に導入した新しいカード申込フォームです。AIを活用して申込者ごとに入力項目を最適化することで、入力項目は従来比で最大3割超削減。あわせて、カード申込後の最短0秒審査も可能となり、入会体験を大きく改善しました。
さらに同社は、こうしたDXを業務効率化だけで終わらせず、収益基盤の強化にもつなげようとしています。このようにクレディセゾンは、内製開発による基盤整備とAIによる審査高度化を組み合わせることで、カード業務そのものを再設計しています。顧客体験と業務生産性を同時に高めている点が、同社の競争力を支える土台になっているといえるでしょう。
DX推進事例の共通点

業界や規模を超えて成功を収めた各社のDX事例を横断的に分析すると、いくつかの重要な共通点が浮かび上がります。
以下の3点は、DX推進の成否を分ける本質的な要素です。
共通点①:長期的なビジョンをもとに取り組んでいる
DX推進に成功している企業は、目先の業務効率化だけでなく、5年〜10年後の事業のあり方を見据えた長期ビジョンのもとでデジタル化を進めています。
たとえば、旭化成の「DX-Challenge 10-10-100」や日立製作所の「Lumadaビジネス比率65%」のように、長期視点で具体的な数値目標を掲げている点が特徴です。単年度の予算や短期的なROIだけで判断せず、変革への投資を継続する姿勢を組織として持ち続けることが、DXの本質的な成果につながっています。
共通点②:顧客や自社製品に関するデータを活用している
成功事例に共通するのは、データを起点に意思決定する文化が根づいている点です。ニトリの顧客データ活用や横浜銀行のAIレコメンド、アスクルの配送最適化など、各社は自社が保有するデータを深く分析し、顧客体験の向上・業務効率化・新サービスの創出につなげてきました。
重要なのは、データを単に蓄積するのではなく、経営資産として位置づけることです。収集・整備・分析・活用のサイクルを組織的に回せる体制を築くことが、継続的なDX成果を生み出す土台になります。特に、データ活用の内製化を進めた企業ほど、変化への対応力を高めやすい傾向があります。
共通点③:DX推進のための体制構築に投資している
成功企業に共通するのは、DXを一部のIT部門だけの取り組みにとどめず、全社・グループ横断で進める体制を整えていることです。JFEホールディングスの人材育成体制や三井住友FGの専用生成AI開発体制、りそなのデータサイエンス室設立に見られるように、各社はDXを支える人材と組織への投資を進めています。
重要なのは、ツールを導入して終わるのではなく、それを現場で使いこなし、継続的に改善できる体制までつくることです。そのためには、専門人材の確保だけでなく、現場部門とIT部門が連携できる仕組みや、部門横断で意思決定できる運営体制も欠かせません。
また、外部ベンダーへの依存を減らし、内製化と自走化を進めた企業ほど、中長期で大きな成果につなげやすい傾向があります。経営層がリーダーシップを発揮し、人材・予算・権限をDX推進に集中させることが、体制構築を成功させる鍵になります。
DX推進事例からみる成功のためのポイント

成功事例の分析から導き出された、DX推進を成功させるための実践的なポイントを6つ紹介します。
自社のDX推進計画に照らし合わせながら確認してください。
①目的の設計
DX推進において最も重要なのが「目的の設計」です。多くのDX失敗事例に共通するのは、「デジタル化すること」自体が目的化してしまい、何のためにDXを行うのかが不明確なまま進んでしまうことです。成功企業は必ず、DXを通じて「顧客にどんな価値を届けるか」「自社のどの課題を解決するか」「数年後にどの事業領域で競争力を持つか」を先に定義しています。
たとえば旭化成の「10-10-100」のように、目的を数値化・言語化することで、全社員が同じ方向を向いて動けるようになります。目的設計において重要なのは、効率化・コスト削減といった守りのDXだけでなく、新たな収益モデルの創出・顧客体験の根本的な変革といった攻めのDXを視野に含めることです。短期・中期・長期の目的を階層的に設計し、各フェーズで達成すべき成果を明確に定義することが、DX成功の土台となります。
また、目的設計は一度決めたら終わりではなく、技術環境・市場環境の変化に応じて定期的に見直す柔軟性も必要です。特に生成AIの登場により、従来想定していなかった効果・リスクが生じるケースも増えており、目的と戦略の継続的なアップデートが求められています。
②経営層主導による目標設定
DXは全社変革を伴うため、現場任せや担当部署だけでは推進が難しく、経営層のコミットメントが不可欠です。成功事例のほとんどで、CEOやCDO(最高デジタル責任者)が陣頭指揮をとり、予算配分・人員配置・組織変更という経営判断を伴う意思決定を主導しています。経営層が具体的な数値目標を対外的に宣言することで、組織全体の覚悟と方向性が揃います。
目標設定においては、曖昧なDX推進ではなく、「〇年までに〇〇%のコスト削減」「デジタル経由の売上比率〇%」といった測定可能な指標を設定することが重要です。
③自社課題の明確化
DXで失敗しやすいのは、「他社が導入しているから」「最新技術だから」という理由で進めてしまうケースです。重要なのは、まず自社の業務や顧客体験を見直し、どこに本当の課題があるのかを明確にすることです。
成果を出す企業は、「業務プロセスのどこが滞っているのか」「顧客のどの不満を解消できていないのか」を丁寧に洗い出したうえで、必要な技術を選んでいます。現場へのヒアリングや業務フローの分析、顧客の声の定量化は、そのための有効な手段です。
また、見るべきなのは表面的な症状だけではありません。たとえば「作業時間が長い」という問題があっても、その背景に情報の分散やシステムの非統合といった構造的な原因が潜んでいるケースがあります。根本原因まで特定してはじめて、適切な打ち手を選べます。DXは技術ありきではなく、課題ありきで設計するものです。課題が明確になってこそ、技術選定、投資規模、優先順位もぶれにくくなります。
④マインドの醸成
どれほど優れたDX戦略や技術を導入しても、現場や管理職に「変わろうとする意識」がなければ、DXは定着しません。成功企業に共通するのは、デジタル技術を脅威ではなく、仕事を支える手段として捉える考え方を組織全体に浸透させていることです。
たとえば、旭鉄工のように現場社員が自らIoTを活用して改善に取り組む文化や、JFEホールディングスのように市民開発者を育成する取り組みは、その好例です。研修や社内表彰、成功事例の共有を通じて、デジタルへの親しみと自信を育てることが、DXを根づかせるうえで欠かせません。
⑤DX推進体制の構築
DXを継続的に推進するには、専任組織・担当者・予算・権限を明確に設定した推進体制が必要です。外部ベンダーへの全面委託ではなく、内製化やCoE(Center of Excellence)型の組織によって、DXの知見を自社に蓄積・継承する体制を作ることが重要です。
理想的な体制は、経営直轄のDX推進組織が全社横断でビジョンと標準を管理し、各事業部門に推進担当者(DX人材)を配置するハイブリッド型です。技術・業務・データの三領域を網羅した人材ポートフォリオを整備しながら、段階的に自走化を図ることが持続的なDX成果の鍵となります。
⑥PDCAサイクルの確立
DXは、一度システムを導入して終わる取り組みではありません。成果を出し続けるには、計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを継続的に回し、市場環境や技術の変化に合わせて柔軟に見直していくことが重要です。
特に欠かせないのが、KPIを設定し、進捗を定期的に検証できる管理体制の整備です。どの施策が効果を生み、どこに課題が残っているのかを可視化できてこそ、次の改善につなげやすくなります。また、DXでは最初から完璧を目指すのではなく、小さく試して学びながら改善を重ねる姿勢も重要です。失敗を許容しながら短い周期で修正を重ねることで、大規模投資のリスクを抑えつつ、着実に成果を積み上げられます。
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顧客情報・商談履歴・活動報告を一元管理することで、営業プロセスの「見える化」とPDCAサイクルの効率化を実現します。マルチデバイス対応で外出先からもアクセスでき、生成AIによるメール文案作成・レポート自動要約機能で入力・管理業務の時間を大幅に削減します。
セキュリティ面でも国内データセンターによる管理・金融機関相当の水準を確保。組織・権限・グループ設定に基づいてアクセス制御を自動化する「ダイナミック可視化」機能も好評です。営業組織のDXを確実に、低コストで推進したい企業に最適な選択肢のひとつといえます。
まとめ

本記事では、製造・物流・小売・建設不動産・保険金融の5業界にわたり、国内先進企業のDX成功事例を幅広く紹介しました。成功企業に共通していたのは、目的の明確化・データ活用の推進・経営層の関与です。DXは単なる技術導入ではなく、組織や業務のあり方を見直す取り組みでもあります。
他社事例を参考にしながら、自社に合った形で着実に進めていくことが重要です。営業・顧客管理のDXには『Knowledge Suite』をぜひご活用ください。
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【執筆者】
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松岡 禄大朗
ブルーテック株式会社・デマンドジェネレーション部所属。
前職のWEB広告代理店で広告運用やアクセス解析を担当。
WEBマーケティング知識を活かして、現在はコンテンツマーケティングに携わり数多くの記事を執筆。
























