ルート営業とは?新規営業との違い、向いている人の特徴を紹介
営業職と一口に言っても、その手法や求められるスキルは企業や商材によって大きく異なります。中でも「ルート営業」は、多くの日本企業で採用されている代表的な営業スタイルの一つです。求人情報などでよく目にする職種ですが、「決まった顧客を回るだけで楽そう」というイメージを持つ人もいれば、「泥臭くて大変そう」と感じる人もいるでしょう。しかし、実際のルート営業は、企業の安定収益を支える非常に重要な役割を担っており、極めて戦略的な動きが求められる仕事です。
本記事では、ルート営業の定義や仕事内容、新規開拓営業との違いといった基礎知識から、ルート営業に向いている人の特徴、成果を出すために必要なスキルまでを徹底的に解説します。また、近年注目されている営業効率化ツールについても触れていきますので、営業職への転職を考えている方や、自社の営業体制を見直したいマネージャー層の方はぜひ参考にしてください。
【この記事の目次】
ルート営業とは?

ルート営業とは、すでに取引のある顧客(既存顧客)を定期的に訪問し、継続的な受注や追加購入を促す営業スタイルのことを指します。「深耕営業」や「既存営業」と呼ばれることもあります。一般的な営業のイメージである「飛び込み」や「テレアポ」で新しい顧客を見つける手法とは異なり、すでに信頼関係がある顧客に対してアプローチを行うのが最大の特徴です。
顧客は、過去に自社の商品やサービスを購入・契約してくれた企業や個人です。そのため、ゼロからの関係構築ではなく、「いかに関係を維持・発展させるか」が重要になります。定期的に顔を出し、困っていることはないか、新しいニーズはないかを聞き出し、顧客をサポートするパートナーとしての立ち位置を確立することが、ルート営業のミッションです。
新規開拓営業との違い
ルート営業を正しく理解するために、対極にある「新規開拓営業」との違いを比較してみましょう。両者は「誰に」「何を」売るか、そして「ゴール」がどこにあるかが大きく異なります。
| 比較項目 | 新規開拓営業 | ルート営業 |
| 1. アプローチする対象 | まだ取引のない企業や個人。「自社の商品を知らない」「興味がない」状態からスタートします。 | すでに取引のある既存顧客。「自社の商品の良さを知っている」状態からスタートします。 |
| 2. 営業のゴール(目的) | 新しい契約を獲得すること(顧客数の拡大)。「0を1にする」活動です。 | 取引の継続、契約更新、単価アップ(LTVの最大化)。「1を10や100にする」活動です。 |
| 3. 求められる | 断られることが前提のため、高い行動量と打たれ強さ(メンタル)、そして短時間で相手を惹きつけるプレゼン能力が求められます。 | 長期的な付き合いになるため、信頼を積み重ねる誠実さ、相手の懐に入るコミュニケーション能力、そして顧客の変化に気づく観察力が求められます。 |
| 4. 成果が出るまでの期間 | 即決型の商材であれば短期で成果が出ることもありますが、大型商材であれば数ヶ月〜数年かかることもあります。 | 定期的な発注がある場合、安定した売上が見込めますが、そこからさらに売上を伸ばすには時間をかけた提案が必要です。 |
このように、ルート営業と新規開拓営業は同じ「営業」でも性質が全く異なります。どちらが優れているということではなく、企業のビジネスモデルによって使い分けられるものです。
ルート営業の仕事内容

では、ルート営業の具体的な仕事内容を見ていきましょう。単に「御用聞き」として注文を受けるだけではありません。顧客の課題を解決し、自社の利益を最大化するために、以下のような業務を行います。
状況のヒアリング・情報提供
ルート営業の基本は、定期的な訪問によるコミュニケーションです。しかし、ただ雑談をして帰ってくるわけではありません。
「前回納品した商品の使い勝手はどうですか?」
「最近、業界の動向で気になることはありますか?」
「新しいプロジェクトが始まると聞きましたが、何かお困りごとはないですか?」
といったヒアリングを行い、顧客の現状を把握します。
また、新商品の案内や、業界のトレンド情報、他社の成功事例などを提供することも重要な仕事です。顧客にとって有益な情報を持ってくる営業マンは重宝され、「また会いたい」と思ってもらえます。この地道な情報交換が、次のビジネスチャンスを生む土壌となります。
新たな提案(アップセル・クロスセル)
顧客の現状を把握したら、そこに対して解決策を提示します。ここが営業マンの腕の見せ所です。既存の契約を継続してもらうだけでなく、より上位のプランへの切り替え(アップセル)や、関連商品の同時購入(クロスセル)を提案します。
例えば、コピー機のルート営業であれば、「印刷枚数が増えてきたので、こちらの高速モデルの方が長期的にはコスト削減になりますよ(アップセル)」や、「最近セキュリティに関心が高いようですが、ネットワークのセキュリティ診断も一緒にいかがですか?(クロスセル)」といった提案を行います。信頼関係があるからこそ、顧客も提案に耳を傾けてくれやすく、強引な売り込みにならずにスムーズに商談が進むケースが多いです。
アフターフォロー・納品・メンテナンス
商品を売って終わりではないのがルート営業です。納品後のフォローこそが、次回の契約に直結します。「不具合はありませんか?」「使い方は分かりましたか?」といった細やかなフォローを行い、万が一トラブルが発生した際には迅速に対応します。商社やメーカーのルート営業では、実際に商品を納品したり、簡単なメンテナンスを行ったりすることもあります。
クレーム対応もルート営業の仕事の一部です。厳しい言葉を受けることもありますが、誠心誠意対応することで「ここまでやってくれるのか」と逆に信頼が深まり、強固なパートナーシップが築かれることも珍しくありません。
ルート営業を実施するメリット

企業がルート営業というスタイルを採用するのには、明確なメリットがあります。働く側にとっても、企業側にとっても、安定性が高い点が大きな魅力です。
精神的な負担が比較的少ない
営業職の離職理由として多いのが「飛び込み営業での門前払い」や「テレアポでのガチャ切り」による精神的な疲弊です。その点、ルート営業はすでに顔なじみの顧客を相手にするため、話すら聞いてもらえないというケースは稀です。アポイントも取りやすく、和やかな雰囲気で商談が進むことが多いため、心理的な安全性は高いと言えます。「売らなければ」というプレッシャーはもちろんありますが、「拒絶される恐怖」が少ないことは、長く働き続ける上で大きなメリットとなります。
売上の予測が立てやすく、安定する
ルート営業では、顧客の過去の購入履歴や予算時期、消費サイクルを把握しているため、「来月はこのくらいの注文が見込める」という売上予測が立てやすくなります。経営視点で見ても、毎月安定したベースの売上があることは非常に重要です。新規開拓は水物(みずもの)であり、月によって成果に波が出やすいですが、ルート営業による既存顧客からの売上は企業の経営基盤を支える柱となります。この安定感があるからこそ、長期的な視点でじっくりと顧客に向き合う提案活動が可能になります。
信頼関係が「資産」として蓄積される
新規営業では一度きりの取引で終わってしまうこともありますが、ルート営業では顧客との付き合いが数年、数十年と続くこともあります。時間をかけて築き上げた信頼関係は、競合他社が入り込めない強力な参入障壁となります。「商品は他社の方が少し安いけど、いつも〇〇さんがよくしてくれるから、御社にお願いするよ」と言われることは、ルート営業ならではの醍醐味です。また、深く入り込むことで顧客の業界知識や内部事情にも詳しくなり、それが営業マン自身のスキルアップや市場価値向上にもつながります。
ルート営業を実施するデメリット

一方で、ルート営業にはデメリットや難しさも存在します。これらを理解しておかないと、「思っていたより成果が出ない」「マンネリ化して辛い」といった事態に陥る可能性があります。
劇的な売上拡大は難しい
ルート営業の売上は、基本的に「顧客の予算規模」に依存します。どんなに優れた営業力を持っていても、顧客が必要とする量には限界があります。新規開拓のように、新しい市場を見つけて売上を倍増させるようなダイナミックな成果は出しにくい傾向にあります。
そのため、自分の実力だけで青天井に稼ぎたい、インセンティブ(歩合給)で高収入を得たいというタイプの人には、物足りなさを感じる場面があるかもしれません。コツコツと積み上げる営業スタイルであるため、成果が見えるまでに時間がかかる側面もあります。
1社との関係悪化が大きなダメージになる
特定の大口顧客に売上を依存している場合、その顧客との関係が悪化したり、他社に乗り換えられたりすると、一気に売上が減少するリスクがあります。また、ルート営業には「逃げ場がない」という辛さもあります。もし苦手な担当者がいたとしても、担当替えがない限り、定期的に顔を合わせなければなりません。関係がこじれてしまった場合でも、訪問し続けなければならないのは、精神的に大きなストレスになるでしょう。
マンネリ化しやすく、「御用聞き」になりがち
毎回同じ顧客を回り、同じような商品を扱っていると、どうしても業務がルーチン化しやすくなります。「こんにちは、何か足りないものはありませんか?」「特にないよ」「わかりました、また来ます」といった会話だけの「単なる御用聞き」になってしまうと、営業としての介在価値がなくなってしまいます。これでは競合他社に価格競争で負けてしまうでしょう。マンネリを打破し、常に新しい情報や提案を持っていく主体性が求められますが、それを継続し続けるモチベーション維持が難しいと感じる人もいます。
ルート営業を取り入れるべきか

すべての企業がルート営業に適しているわけではありません。どのようなビジネスモデルや商材の場合に、ルート営業を強化すべきなのでしょうか。
リピート性の高い商材・消耗品を扱っている場合
食品、文房具、建設資材、医療機器の消耗品、オフィスのトナーなど、一度買ったら終わりではなく、定期的に補充が必要な商材はルート営業に最適です。在庫がなくなりそうなタイミングを見計らって訪問することで、自然な流れで受注を獲得できます。また、競合他社に入り込まれないよう定期的に接触頻度を保つ必要があるため、ルート営業の体制構築が不可欠です。
LTV(顧客生涯価値)を重視するビジネスモデル
SaaS(Software as a Service)などのサブスクリプション型ビジネスや、保守・メンテナンス契約が収益の柱となるビジネスの場合、契約後の顧客満足度が解約率(チャーンレート)に直結します。「売って終わり」ではなく、使い続けてもらうことで利益が出るモデルでは、カスタマーサクセス的な役割も含めたルート営業の重要性が極めて高くなります。顧客を成功に導き、長く契約してもらうことが経営の安定につながるためです。
顧客単価の向上(アップセル)が見込める場合
一度の取引額は小さくても、関連商品が多岐にわたる場合や、ラインナップが豊富な場合はルート営業が有効です。最初は小さな取引から始まり、信頼関係を築きながら徐々に取引商品を増やしていく「深耕営業」ができるからです。顧客の事業拡大に合わせて、提案の幅を広げていける商材であれば、ルート営業部隊を配置して顧客に入り込む戦略が効果的です。
ルート営業に求められるスキル

ルート営業でトップセールスと呼ばれる人たちは、どのようなスキルを持っているのでしょうか。特別な才能というよりも、日々の習慣や意識で磨かれるスキルが中心です。
傾聴力・ヒアリング能力
ルート営業において最も重要なのが「聞く力」です。顧客は「売り込み」を警戒しますが、「相談」には乗ってほしいと思っています。「最近、現場の方で困っていることはないですか?」「実は今度、こんなプロジェクトが始まるんですが…」といった何気ない会話から、ビジネスの種を見つける能力が求められます。
顧客自身も気づいていない潜在的なニーズを引き出すには、話し上手であることよりも、相手が話しやすい雰囲気を作り、適切な質問を投げかける力が重要です。
課題発見力・提案力
ヒアリングで得た情報をもとに、「それなら、弊社の商品でこう解決できます」と結びつけるスキルです。単にカタログを見せて説明するだけでは不十分です。「御社の今の状況ですと、AプランよりもBプランの方が業務効率が20%アップします」といった具体的かつ顧客視点での提案ができるかどうかが、御用聞き営業との分かれ目になります。常に「顧客の利益」を第一に考え、時には「今は買わない方がいい」とアドバイスできるくらいの誠実な提案力が、長期的な信頼を生みます。
人間力・雑談力
ルート営業は、人と人との付き合いです。極端な話、「商品はどこから買っても同じだが、あなたから買いたい」と言わせることができるかどうかが勝負です。そのためには、ビジネスの話だけでなく、趣味や家族の話、世間話などで盛り上がれる「雑談力」も武器になります。「この人と話すと楽しい」「元気が出る」と思ってもらえれば、訪問のアポイントも取りやすくなります。
礼儀正しさ、約束を守る誠実さ、清潔感といった基本的な「人間力」が、スキル以上に結果を左右することも珍しくありません。
ルート営業に向いている人の共通点

では、どのような性格や特徴を持つ人がルート営業に向いているのでしょうか。
マメで几帳面な人
ルート営業は、日々の地道な積み重ねです。「〇月〇日に連絡すると言った約束を守る」「依頼された見積もりを即日送る」「定期的に顔を出す」といった、当たり前のことを徹底して継続できるマメさが最強の武器になります。派手なパフォーマンスは必要ありません。顧客の誕生日や設立記念日を覚えていたり、前回の会話の内容をメモしていて「そういえば、あれどうなりました?」と聞けたりする几帳面な人は、確実に顧客の信頼を勝ち取ります。
聞き上手で、相手に寄り添える人
自分の話ばかりする人より、相手の話をじっくり聞ける人の方が向いています。顧客は、営業マンに対して「悩みをわかってほしい」と思っています。相手の立場に立って物事を考え、共感できる感受性の強さは、ルート営業において大きな才能です。ガツガツと自分の主張を押し通すのではなく、相手のペースに合わせて会話のキャッチボールができる人は、顧客から愛される営業マンになれます。
変化に敏感に気づける観察力がある人
定期的に訪問しているからこそ、微細な変化に気づけるかどうかが重要です。
「担当者の元気がなさそうだ」「オフィスのレイアウトが変わった」「競合他社のカタログが置いてある」といったサインを見逃さず、「何かありましたか?」と声をかけられる人は、トラブルを未然に防いだり、新しいチャンスを掴んだりすることができます。
漫然と訪問するのではなく、常にアンテナを張って周囲を観察できる人は成果を出しやすいでしょう。
誠実で「Giver(与える人)」の精神がある人
自分の売上目標のことばかり考えていると、それは透けて見えてしまい、顧客は離れていきます。逆に、「どうすれば顧客の役に立てるか」を第一に考え、惜しみなく情報提供やサポートができる「Giver」の精神を持つ人は、結果として大きな成果を得られます。
すぐにリターンを求めず、損して得取れの精神で相手に貢献できる誠実さは、長期的な関係構築が必須のルート営業において最も重要な資質と言えるかもしれません。
ルート営業に役立つツール

ルート営業の効率を高め、属人化を防ぐためには、ITツールの活用が欠かせません。人力や記憶だけに頼る管理には限界があります。
名刺管理ツール
ルート営業では多くの担当者と会うため、名刺の管理が煩雑になります。名刺管理ツールを使えば、スマホで撮影するだけでデータ化でき、社内で人脈を共有することも可能です。「以前、部長が会っていた人だ」とわかれば、アプローチの仕方も変わります。
カレンダー・スケジュール管理アプリ
定期訪問の抜け漏れを防ぐために、スケジュール管理は必須です。クラウド型のカレンダーを使えば、チーム内で予定を共有し、ダブルブッキングを防いだり、空き時間に効率よく訪問ルートを組んだりすることができます。
SFA(営業支援システム)
そして、ルート営業において最も強力な武器となるのがSFA(Sales Force Automation)です。
SFAは、顧客情報、商談の進捗状況、過去の接触履歴などを一元管理するシステムです。
「いつ」「誰が」「どのような話をしたか」「次回の提案時期はいつか」といった情報をチーム全体で共有できるため、担当者が不在でも適切な対応が可能になり、担当変更時の引き継ぎもスムーズになります。また、蓄積されたデータを分析することで、「この時期にこの商品を提案すると成約率が高い」といった勝ちパターンを見つけることもできます。しょう。が大きく向上します。
SFAなら『Knowledge Suite』

ルート営業の効率化と売上アップを目指すなら、SFAの導入が近道です。しかし、多機能すぎて使いこなせない、コストが高すぎるといった理由で導入に失敗するケースも少なくありません。そこでおすすめなのが、『Knowledge Suite(ナレッジスイート)』です。
Knowledge Suiteは、SFA(営業支援)、CRM(顧客管理)、グループウェアが一体となったクラウドサービスです。ルート営業にKnowledge Suiteが最適な理由は以下の通りです。
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「担当者しかその顧客のことを知らない」という属人化を解消し、組織全体で顧客をフォローする体制を作るために、Knowledge Suiteは最適なプラットフォームです。
まとめ

ルート営業は、企業の安定した成長を支える要(かなめ)とも言える仕事です。
派手さは少ないかもしれませんが、顧客と深い信頼関係を築き、長くビジネスパートナーとして寄り添えるやりがいは、他の営業スタイルにはない魅力です。
単なる「御用聞き」にとどまらず、顧客の課題を解決するプロフェッショナルとして活躍するためには、ヒアリング力や提案力を磨くと同時に、SFAなどのツールを活用して効率的に動くことが求められます。「人」の力と「ツール」の力を掛け合わせることで、ルート営業の価値はさらに高まります。
これからルート営業を目指す方も、現在ルート営業で悩んでいる方も、ぜひ本質的な信頼構築と効率化を意識して、日々の業務に取り組んでみてください。
【執筆者】

松岡 禄大朗
ブルーテック株式会社・デマンドジェネレーション部所属。
前職のWEB広告代理店で広告運用やアクセス解析を担当。
WEBマーケティング知識を活かして、現在はコンテンツマーケティングに携わり数多くの記事を執筆。
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