RPAのフローティングライセンスとは?役割やメリットを紹介

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が進む中で、どのライセンス形態を選ぶべきか悩む企業も多いのではないでしょうか。とくに、複数のユーザーや部門でソフトウェアを使い回したい場合には、固定型よりも柔軟な運用が可能なフローティングライセンスが有効です。
本記事では、RPAにおけるフローティングライセンスの仕組みや特徴をはじめ、導入するメリットやノードロックライセンスとの違い、導入時の注意点までを分かりやすく解説します。ライセンス選びで迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事の内容】
フローティングライセンス(floating licensing)とは何か

フローティングライセンスとは、ネットワーク上のライセンスサーバーによって一定数のライセンスを一括管理し、複数のユーザーで共有して使用できるライセンス形態のことです。
簡単に言えば、複数のユーザーが同じライセンスを共有してソフトウェアを利用できる方式で、購入したライセンス数の範囲内で同時に使える人数が決まっています。この形式は「同時使用ライセンス」や「ネットワークライセンス」とも呼ばれ、RPAを含むさまざまな業務ソフトで採用されています。
特徴と例
たとえば、RPAツールで2つのフローティングライセンスを契約した場合、社内の複数PCにソフトをインストールしておいても同時に使用できるのは2名までという制約があります。誰でも必要なときに空いているライセンスで利用できるため、ユーザーはどの端末からでも必要なときにソフトを使えるようになります。
この仕組みにより、1人あたりの利用時間が限られている環境や、利用者が時間帯ごとに入れ替わるような場合でも、最小限のライセンス数で効率よくソフトウェアを活用できるのが特長です。
フローティングライセンスを導入するメリット5つ

フローティングライセンスを活用することで、コスト削減や運用の柔軟性など、さまざまなメリットが得られます。ここからは、導入によって得られる代表的なメリットを、5つに絞ってご紹介します。
メリット①:コスト削減
フローティングライセンスの最大の魅力は、ライセンス費用を大幅に抑えられる点です。同時に使う人数分だけライセンスを用意すればよいため、全社員や全端末分を個別に購入する必要はありません。
たとえば、10人のうち実際に同時に使うのが3人だけであれば、3ライセンスの契約で運用できます。これは、1人ずつに固定ライセンスを割り当てる従来型に比べ、無駄を大幅に減らせる仕組みです。また、リモートワークなどで社員が複数の端末を使い分ける場合でも、場所を問わずにライセンスを共有できるため、より柔軟で効率的な運用が可能です。
メリット②:効率的で無駄のないライセンス運用
フローティングライセンスでは、使用状況をリアルタイムで把握できるため、実際の業務に応じた最適な配分が可能です。たとえば設計部門が日中にRPAツールを多用し、夜間は稼働しない場合、空いているライセンスを夜間に活動する保守部門へ自動で割り当てられます。
また、プロジェクト単位で利用者が入れ替わる環境でも、その都度ライセンスを切り替えることで、無駄な追加購入を避けつつ業務をスムーズに継続できます。こうした仕組みにより、ライセンスの過不足が抑えられ、コストの最適化と運用効率の向上が同時に実現できるでしょう。
メリット③:必要なときにすぐ利用できる
フローティングライセンスは、ソフトをあらかじめインストールしておけば、使いたいときにすぐ起動できます。急ぎの対応や短時間だけ使いたい場面でも、ライセンスが空いていればすぐに使えるため、端末やユーザーに縛られません。
これにより「自分のパソコンでは使えない」「申請に時間がかかる」といった無駄な待ち時間がなくなり、スムーズに作業へ移れるようになります。とくに、複数の部署やチームで1つのツールを共有している場合、必要な人が必要なタイミングで使えることで、業務の効率やスピードが大きく向上します。
メリット④:他部門や拠点でも共有可能
フローティングライセンスは特定の端末やユーザーに縛られないため、部門や拠点が異なるチーム間でもライセンスを共有できます。ソフトがインストールされていれば、どの拠点からでも利用でき、離れたオフィス同士でライセンスを無駄なく活用することが可能です。
たとえば、東京本社と地方拠点の双方で同じRPAツールを使う場合でも、1つのライセンスを共有することでコストを抑えながら運用効率を高められます。さらに、リモートワーク環境下でもロボットやツールの共有がスムーズに行え、柔軟な働き方の実現にもつながります。
メリット⑤:スケーラビリティ(拡張性)に優れている
業務の成長や利用者の増加にあわせて、ライセンス数を段階的に調整できるのもフローティングライセンスの強みです。ニーズが高まれば、追加ライセンスを導入することで即座に同時利用枠を広げられます。
反対に、使用頻度が下がった場合でも、余剰ライセンスを抱えるリスクを最小限に抑えられます。まずは最小限のライセンスで始め、必要に応じて段階的に拡大していくようなスモールスタートにも最適な仕組みです。急な人員増やプロジェクト立ち上げにも柔軟に対応でき、将来を見据えた運用が可能になります。
フローティングライセンスが果たす役割

フローティングライセンスの運用では、ライセンスサーバーが中心的な役割を担い、ライセンスの管理や配布は次のような仕組みで行われます。
- ・ライセンスプールの集中管理
- ・同時利用数の制御と可視化
- ・ライセンスのリリース(解放)
これらの仕組みや機能について、順番に解説していきます。
ライセンスプールの集中管理
フローティングライセンスでは、ライセンスサーバーが同時利用数の管理を担い、契約数を超えないよう自動的に制御しています。ユーザーがソフトを起動すると、ライセンスが一時的に貸し出され(チェックアウト)、終了後に返却(チェックイン)される仕組みです。
これにより、必要なタイミングでライセンスを確保でき、過剰な利用を防げます。使用状況はダッシュボード上で視覚的に把握できるため、混雑する時間帯や未使用ライセンスの傾向を分析しやすく、配分や増減の判断に役立ちます。
ライセンスの割り当て
RPAソフトを起動すると、ライセンスサーバーが使用状況を確認し、空きがあればライセンスを自動で割り当てます。この仕組みにより、ライセンスは実際に使っている間だけ確保され、使い終わるとサーバーに返却されます。必要なときに必要な人が使えるよう設計されており、ライセンスの無駄を抑えながら効率的に運用できるのが特長です。
ライセンスのリリース(返却)
作業が完了し、ユーザーがソフトを閉じると、ライセンスはサーバーへ自動的に返却されます。これにより、そのライセンスは他のユーザーが再び利用できる状態になります。未使用時にはライセンスがプールに戻る仕組みのため、1つのライセンスを複数人で効率的に共有可能です。
とくに利用者の多い職場では、ライセンス数を必要最小限に抑えつつ、必要なときに必要な人が使える運用体制を構築できます。
ライセンスの割り当て方とは
フローティングライセンスは、利用者や端末を固定せずにライセンスを共有できる仕組みです。企業が購入したライセンス数がライセンスサーバーに登録され、ユーザーがソフトを起動すると、その時点で空きライセンスが自動で割り当てられます。
利用終了後はライセンスがサーバーに返却され、次のユーザーに再配分されるため、ライセンスを無駄なく使い回せます。全ユーザーが同時に使うわけではないため、必要数を最小限に抑えながら高い利用効率を実現できるのが特長です。とくに、多人数での使用や利用タイミングが分散する環境では、コスト削減と柔軟な運用の両立が可能になります。
ノードロックライセンス(node-locked licensing)とは何か

ノードロックライセンス(スタンダードライセンス)は、特定の端末にライセンスを固定して紐付ける方式です。そのPCにインストールされたソフトウェアのみ利用可能となり、他の端末では使用できません。
つまり、1台ごとに1ライセンスが必要となるため、別の端末でも使いたい場合は追加ライセンスを購入する必要があります。このあと、フローティングライセンスとの違いについて詳しく解説していきます。
フローティングライセンスとの違い
フローティングライセンスとノードロックライセンスは、割り当ての仕組みや利用環境、コスト面で大きく異なります。
以下に主な違いを表にまとめました。
比較項目 | フローティングライセンス | ノードロックライセンス |
割り当て方法 | ライセンスは利用時に動的に割り当てられ、 使用後は返却される | ライセンスが特定の端末または ユーザーに固定される |
利用場所の 柔軟性 | ネットワーク内ならどの端末でも使用可能 (空きがあれば) | ライセンスを紐付けた端末でのみ利用可能 |
コスト効率 | 少数のライセンスで多数ユーザーが 使い回せるためコストを抑えやすい | 端末ごとに購入が必要なため、 ユーザー数が多いとコストが膨らむ |
管理のしやすさ | ライセンスサーバーの導入と運用が必要 | 各端末に紐付けるだけで管理が簡単 |
適した利用環境 | 利用タイミングが不規則なチームや 複数拠点での運用に最適 | 単独ユーザー・少人数での 固定利用に向いている |
それぞれに利点と課題があり、最適な方式は利用スタイルや規模によって異なります。複数人でRPAを開発・実行する環境にはフローティングが適しており、特定端末での小規模運用にはノードロックの方が効率的でしょう。
フローティングライセンスの導入がおすすめな企業の特徴

では、どのような企業・利用形態でフローティングライセンスが真価を発揮するのでしょうか。以下に、フローティングライセンス導入がとくにおすすめできる企業の特徴4つを紹介します。
複数のユーザーでソフトを共有して使いたい場合
チームや部署内で同じソフトを複数人が使う場面がある企業には、フローティングライセンスが効果的です。
この方式では、たとえば10人のメンバーがいても、同時に使うのが最大3人程度であれば、3ライセンスだけで運用できます。ユーザーや端末を固定せずに、必要なタイミングで空いているライセンスを誰でも利用できるため、ライセンスの利用効率が高まります。
結果として、全員分を個別購入する必要がなくなり、導入コストを大幅に削減することが可能です。プロジェクト単位で使い回すような不定期利用にも適しており、柔軟かつ経済的なライセンス運用が実現できます。
部門間や遠隔地の拠点でも利用したい場合
複数の部署や地理的に離れた拠点間で同一ソフトを活用する企業にとって、フローティングライセンスは非常に有効です。
たとえば、東京と大阪といった拠点でも、ライセンスがネットワーク経由で共有されるため、各拠点で必要なタイミングにあわせて利用できます。これにより、グローバルに展開する企業や多数の支社を持つ企業でも、個別にライセンスを購入する手間やコストを削減し、全体のリソースを効率的に活用できるのです。
ソフトの利用頻度がプロジェクトや時期によって変動する場合
業務の繁忙期やプロジェクトの進行状況によってソフトの使用頻度が大きく変わる企業には、フローティングライセンスが最適です。
たとえば開発や分析業務が集中する期間には複数人で同時に利用し、落ち着いた時期には使用が減るといったケースでも、ライセンスを使い回すことで無駄を抑えられます。常に全員分のライセンスを用意する必要がないため、必要なときだけ効率的に活用でき、コストと稼働のバランスを取りながら柔軟な運用が可能になります。
ライセンス数を最小限に抑えて初期投資を低減したい場合
導入コストを抑えたいスタートアップや中小企業にとって、フローティングライセンスはコスト効率の高い選択肢です。必要な同時利用数だけを見積もって購入すればよいため、全ユーザー分のライセンスを最初から揃える必要がなく、余計な出費を防げます。
まずはスモールスタートで運用を始め、利用状況に応じて徐々にライセンスを拡張していくことで、予算にあわせた柔軟な導入がしやすくなるでしょう。
フローティングライセンスを導入する際の注意点

フローティングライセンスは、柔軟性とコスト効率に優れた仕組みですが、導入時にはいくつか注意すべき点があります。まず、ライセンスを集中管理するためのサーバー環境が必要です。オンプレミスで運用する場合には、自社でライセンスサーバーを構築・維持しなければならず、IT部門の技術的な対応が求められます。なお、ベンダーによってはクラウド上でライセンス管理を提供している場合もあるため、事前に提供形態を確認しておくとよいでしょう。
また、フローティングライセンスはネットワーク接続が前提となるため、オフライン環境では利用できません。出張先などでの使用を想定する場合は、あらかじめ対策を講じる必要があります。さらに、契約したライセンス数以上に同時使用することはできないため、利用が集中するタイミングではライセンス待ちや使用制限が発生するリスクもあります。初期費用に加えてサーバーの運用・保守にも継続的なコストがかかるため、将来的な利用拡大も見据えて予算を計画的に管理する必要があるでしょう。こうした運用を継続的に最適化するためには、利用状況を常に監視し、ライセンスの再配分や見直しを行える体制づくりが不可欠です。
以上の点を踏まえたうえで、自社のITインフラや業務の実態に合った形で導入計画を立て、適切な運用ルールを整備していきましょう。や販売戦略に充てられるようになり、現場の満足度や生産性の向上にもつながっています。ると、年間約4,700時間の業務時間削減が見込まれています。
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ここまで、RPA導入におけるライセンス形態や選び方について解説してきました。とはいえ、初めてRPAを導入する企業にとっては、運用の難しさや初期設定の負担が不安材料になりがちです。そんな企業にこそおすすめしたいのが、ブルーテック株式会社が提供する国産RPAツール『おじどうさん』です。
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まとめ

フローティングライセンスは、RPAを効率的に活用するための有力な選択肢のひとつです。限られたライセンスを複数のユーザーで柔軟に共有できるため、コストを抑えつつ自動化を効率的に進められます。部門や拠点をまたいだ運用にも対応し、利用状況の変化にも柔軟に対応できる点は大きな強みといえるでしょう。
導入を検討する際は、ライセンスの仕組みと自社の業務スタイルを照らしあわせ、最適な運用体制を構築することがカギになります。RPAとフローティングライセンスを戦略的に活用し、業務の質とスピードを引き上げる一歩を踏み出しましょう。